BORDERLAND

編んだ言葉、拾った言葉。

おこまりごと

朝。慌ただしく子どもを保育園へと送り届け、疲れた心に染み入る、ラジオの声。「阿佐ヶ谷姉妹の、お困りでしたらぁ~♪」とはじまる。 生活に生じるさまざまなお困り事に応じた相談窓口を、阿佐ヶ谷姉妹の二人が教えてくれるのである。「今日はどんなお困り事のお話するのかしら?お姉さん」 「今日のお困り事はね……」お困り。おこまり。OKOMARI。包みこむO音から唇のソフトな接近、小さく高く鳴るR。すごもりへと連想される、控えめで、優しい、言葉。

結局、あらゆる問題は心に帰結するのだし、心こそがどうにもならないと思う日々。「気の持ちよう」と言うが、「気」は私たちの所有の対象などではない。持てない。むしろ「気」に持たれてしまっているのかもしれない、私たちが。心にはじまるお困り事の数々を、「おこまりごと」として受け止めてくれる誰かがいてくれたら……。心に愛を、労りを。