BORDERLAND

編んだ言葉、拾った言葉。

赤子にたいする恐怖

よそさまのお子様が、たとえば生後三ヶ月の赤子が、虐待の末死亡などと聴くと、どうしてあんなに小さな、か細い声の、動くこともできない対象を暴行できるのだろうと思ってしまうが、ふと、わたしも生後三ヶ月のころは娘が怖かったなあと思いだす。

今思えば、たしかに小さく、か細い声で、動くこともできない赤子なのに、あの頃狭い部屋、一対一で娘に対面していると、ほんとうに怖かった。泣きだせばまるで拳銃片手に脅されているような気もしたし、止まぬ泣き声は耳を塞いでも浸食してきて、頭を内側から殴られつづけているような思いがした。娘はわたしの強権的な支配者だった。

どうすれば泣きやむのか分からず、身体は糸の切れた操り人形のように力が入らず、ただ見つめていると痛みに意識を失ってしまいそうだった。娘は諦めて泣きやむということの無い子だったから、一時間でも泣きつづけていた。人はいつでも、恐怖をもって人を傷つけるのだと思う。