BORDERLAND

編んだ言葉、拾った言葉。

ある社会学者に出会った女

先日、育児中の女性研究者が集う交流会があった。いまだ男性ばかりのアカデミアにおいて、女性研究者しかも育児経験者が出会える場はそう多くない。ひとしきり自分の経験・不安・不満・幸福などを語らせていただいたところ、ひとりの社会学者がこう言った。

「では、育児中の研究者をサポートするために、どんな制度が必要だと思いますか?」

ごもっともな質問だと思う。しかしなぜだか虚をつかれた感じがあった。頭の中がひっくりかえる感じがあった。制度のことなど、考えたことがなかった・・・・・・!私の頭の中は、いまある制度の中でやりくりすることでいっぱいで、制度を変えるべきかとか、変えるならどのように変えるべきかなど、考えたことがなかったし、考えたことがなかったことに気づいてすらいなかった。

不意の質問にオタオタする私は、まるでフェミニストに「個人的なことは政治的なことよ」と囁かれた女たちのようだった。目を開かれる気持ちになると同時に、ほんの少しの疑念も残る。ほんとうにこれって政治的なことなの?いえいえ、だってこんなことやあんなことはすっごく個人的なことで、きっとだれにも共有できないことじゃない?ほんとに、あれだけはもうぜったい私しか経験していないってぐらい、個人的なことなんだから、そんなことまで政治的だと言う勇気も図々しさも無い、誰かに話すことも躊躇しちゃうぐらいよ・・・・・・でもどこまでが個人的で、どこからが政治的かって分かんない、まさか、もしかして、私の経験の中に、ほんのちょっとは政治的なことも混じってるのかしら・・・・・・