BORDERLAND

編んだ言葉、拾った言葉。

だいじ、だいじ

シャンプーの香る柔らかい髪の中に鼻先を埋めて、「だいじ、だいじ」と呟くと、「ダァジ、ダァジ」と返ってくるから、なんどもなんども「だいじ、だいじ」と繰りかえす。この声がピッタリ後頭部に張り付いて、いつか彼女の足かせになりますように。重い重い足をとうとう持ちあげられず、倒れこんでしまいますように。そして二人で土の上、やさしく抱きあって空を見たりして。涙の上に降る土に、まぶたをしばたたかせたりして。ふと、大事にしてもらいたかったのは私のほうだと思った気もするけれど、気づかなかったことにして。